インハウス広告運用人材の要件とは?採用・育成を成功させるスキルと見極め方

企業のマーケティング活動における広告運用のインハウス(内製化)は、いまや広く浸透した取り組みです。事業会社を対象とした2024年の調査では、広告運用を「全て内製化」している企業が30.0%、「一部のみ内製化」が53.0%と、あわせて8割超(83.0%)が何らかの形で内製化を進めており、内製化していない企業でも約3割が今後の内製化に意欲を示しています(参考:事業会社の広告運用における内製化実態調査|富士フイルムビジネスイノベーション)。マーケティング業務全般を対象とした別の調査でも、回答者の約85%が何らかの形で内製化に取り組んでいると報告されています(参考:マーケティング業務の内製(インハウス)化に関する調査|ナイル株式会社)。

こうした内製化の広がりを後押ししているのが、デジタル広告市場そのものの急拡大です。電通「2024年 日本の広告費」によると、インターネット広告費は3兆6,517億円(前年比109.6%)と3年連続で過去最高を更新し、日本の総広告費全体の47.6%を占めるまでに成長しています(参考:2024年 日本の広告費|電通)。広告の主戦場がテレビなどのマス媒体からデジタルへと移るなかで、変化の速い運用を社内で機動的に回したいというニーズが、インハウス化を一段と加速させています。

※元原稿では「インハウス(内製化)の割合は年々増加傾向にあります」とのみ記載していましたが、出典の明示が必要だったため、富士フイルムビジネスイノベーション(2024年)・ナイル(2023年)の内製化調査、および電通「2024年 日本の広告費」の市場データに基づく具体的な数値・記述に修正しています。なお、総務省・経済産業省の統計には広告業の売上高はあるものの、「インハウス化率」を経年で示す公的統計は存在しないため、民間調査と電通の市場データで補強しています。

しかし、多くの企業が広告運用のインハウス化を目指す一方で、成果を出せる専門人材の確保という大きな壁に直面しています。自社に必要な人材のスキルや経験を明確に定義できず、採用や育成の方針が定まらないケースは少なくありません。この記事では、広告運用のインハウス化を成功させるために不可欠な人材要件を「スキル」「経験」「マインドセット」の3つの側面から具体的に解説します。さらに、採用と育成どちらが自社に適しているかの判断基準も提示し、インハウス体制構築の成功を支援します。

インハウス広告運用が重要視される背景

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インハウス広告運用とは、広告代理店などの外部パートナーに委託せず、自社の従業員が主体となってWeb広告の企画、運用、分析、改善までを一貫して行う体制を指します。従来は代理店への委託が一般的でしたが、事業環境の変化に伴い、多くの企業がインハウス化のメリットに注目しています。ここでは、インハウス運用が重要視される主な背景を解説します。

1. 代理店手数料などのコスト削減

広告代理店に運用を委託する場合、一般的に広告費の15%〜20%が手数料として発生します(参考:デジタル広告運用の内製化(インハウス化)とは?|メンバーズ)。広告予算が大きくなるほど、この手数料は事業にとって大きな負担となります。インハウス化を実現すれば、この手数料を削減し、その分の費用を広告予算や他のマーケティング施策に再投資できます。中長期的に見れば、大幅なコスト効率の改善が期待できます。実際、前述の内製化実態調査でも、内製化に取り組む理由の第1位は「広告運用コストを削減するため」(62.9%)であり、内製化した企業の70.8%が実際にコスト削減を実感したと回答しています(参考:事業会社の広告運用における内製化実態調査|富士フイルムビジネスイノベーション)。

2. 施策のスピード向上とPDCAサイクルの高速化

代理店を介した運用では、施策の変更やクリエイティブの修正に際して、コミュニケーションや承認プロセスに時間がかかることがあります。インハウス体制では、社内の担当者が直接広告管理画面を操作するため、市場の変化やキャンペーンの状況に応じて迅速な意思決定と実行が可能です。これにより、PDCAサイクルを高速で回し、広告効果の最大化をスピーディーに目指せます。

3. 社内へのノウハウ蓄積とデータ活用

代理店に運用を任せていると、具体的な運用ノウハウや詳細な分析データが社内に蓄積されにくいという課題があります。インハウス化によって、成功事例も失敗事例もすべて自社の資産として蓄積されます。また、広告データと自社の顧客データや販売データを直接連携させることで、より深い顧客インサイトを得て、マーケティング戦略全体の精度を高めることにも繋がります。

4. 事業戦略との連携強化

インハウスの担当者は、自社の事業目標や商品・サービスへの理解が深く、経営層や他部門との連携も密に行えます。そのため、広告運用を単なる集客手段としてではなく、事業戦略と直結した施策として展開できます。新商品のローンチや急な方針転換にも柔軟に対応し、一貫性のあるマーケティング活動を実現できる点は大きな強みです。

インハウス広告運用人材に求められる3つの要件

ノートPCでの作業イメージ

インハウス化を成功させるためには、適切な人材の確保が最も重要です。必要な人材要件は、単に広告媒体の知識があるだけではありません。「スキル」「経験」「マインドセット」という3つの側面から、自社が求める人物像を具体的に定義する必要があります。

1. スキル要件(テクニカルスキル)

広告運用を実務として遂行するために必要な専門知識や技術です。これらのスキルは、日々の運用業務の品質に直結します。

  • 主要広告媒体の知識と運用スキル: Google広告やYahoo!広告といった検索連動型広告、Meta広告(Facebook/Instagram)やLINE広告などのSNS広告に関する深い知識と、実際の管理画面を操作して入稿、設定、最適化ができるスキルは必須です。
  • 分析・レポーティングスキル: Google Analytics 4(GA4)や各種広告媒体のレポート機能を活用し、配信結果を正しく分析する能力が求められます。数値を読み解き、課題を発見し、次のアクションに繋げるための示唆を導き出す力が重要です。
  • クリエイティブ制作・ディレクションスキル: 広告文やバナー、動画といったクリエイティブの成果を判断し、改善案を考案するスキルが必要です。自ら制作する能力までは必須でない場合もありますが、デザイナーや外部パートナーに的確な指示を出すディレクション能力は不可欠です。
  • 周辺領域の知識: 広告効果を最大化するためには、広告の遷移先であるランディングページを改善するLPO(Landing Page Optimization)や、入力フォームを改善するEFO(Entry Form Optimization)といった周辺領域の知識も持っていると、より高い成果が期待できます。

2. 経験要件(実務経験)

過去の業務でどのような役割を果たしてきたかを示す指標です。自社の事業フェーズや目標に合わせて、求める経験レベルを明確にすることが重要です。

経験レベル想定される役割と経験
ジュニアクラス1〜3年程度の運用経験。特定の媒体の基本的なオペレーションやレポーティングを担当。先輩担当者の指示のもとで業務を遂行できるレベル。
ミドルクラス3〜5年程度の運用経験。複数の広告媒体を横断的に扱い、月額数百万円規模の予算を一人で運用・管理した経験。自ら課題発見と改善提案ができるレベル。
シニアクラス5年以上の運用経験。広告戦略の立案から実行、効果検証までを一貫して担当。月額数千万円規模の予算管理や、チームマネジメント、メンバー育成の経験を持つレベル。

上記の経験年数に加え、「どのような業界・商材を扱ってきたか」「どのくらいの広告予算を運用してきたか」も重要な判断基準です。特に、自社のビジネスモデル(BtoB/BtoC, EC/リード獲得など)と親和性の高い経験を持つ人材は、即戦力として活躍する可能性が高まります。

3. 「一人前」の水準は代理店の育成ステップが参考になる

インハウスで戦力として広告運用を任せられる水準は、一般に広告代理店で実務経験を積んだ運用者と同等のレベルが一つの目安になります。代理店がどのように運用者を育てているかを知ると、自社で求めるべき到達点や、育成にかかる期間をイメージしやすくなります。

たとえば、ある広告代理店が公開している新人育成プログラムでは、新人が主担当として案件を持つまでに、必要なスキルを次の5つのステップに分けて段階的に習得させています(参考:運用型広告に必要なスキルを付けるためにおこなう5つのステップ別研修|キーワードマーケティング)。

  1. 社会人基礎スキル(入社直後):挨拶・敬語・ビジネスメール・Web会議の所作など、職種を問わない基本
  2. 広告入稿スキル:媒体ごとの用語や入稿規定の理解、Google広告認定資格の取得、管理画面・エディターの操作
  3. レポーティングスキル:レポート作成、ピボットテーブルやVLOOKUPなどの実践的Excel操作、伝わる資料デザイン
  4. 安定案件の運用スキル:予算進捗・CPAの管理、配信ペース調整の判断、データに基づく分析手順
  5. 新規・最適化案件の運用スキル:アカウント構築、タグ設置・計測設定、データフィード広告の運用

このうちステップ4の「成果が安定した案件を一人で回せる」状態に至るまでには、同社のステップ構成からも最短で入社後半年以上が必要と読み取れます。さらに、新規アカウントの構築や最適化(ステップ5)まで含めて複雑な案件を任せられるようになるには、一般に運用2年目以降の実務経験が一つの目安となります。インハウスで広告運用を担う人材には、このステップ4〜5に相当するスキル(安定運用に加え、新規構築・最適化までこなせる力)を備えた人材か、そこまで育成できる環境が求められると考えるとよいでしょう。

自社に合った人材確保の方法:採用と育成の判断基準

研修の選び方イメージ

インハウス広告運用のための人材を確保するには、「外部からの採用」と「社内人材の育成」という2つの選択肢があります。どちらが自社に適しているかは、企業の状況や目指すゴールによって異なります。ここでは、それぞれのメリット・デメリットを整理し、判断基準を提示します。

1. 「採用」が適しているケース

即戦力となる経験者を外部から採用する方法です。特に、事業をスピーディーに立ち上げたい、または拡大したい場合に有効な選択肢となります。

採用の最大のメリットは、即戦力性です。すでにスキルと経験を持つ人材であれば、教育コストや時間をかけずに早期の成果が期待でき、自社にはない新しい知見やノウハウを持ち込んでくれる可能性もあります。一方でデメリットとして、経験者であるほど人件費は高くなる傾向があり、スキルは高くても自社の文化や事業に馴染めない「カルチャーフィット」のリスクも考慮しなければなりません。

こうした特性から、採用が向いているのは次のような企業です。広告運用をすぐにでも開始・強化したい企業や、社内に指導できる人材がおらず育成の土壌がない企業では、外部から経験者を迎える方が現実的です。また、大規模な広告予算を扱う予定があり、高度な専門知識を最初から必要とする企業も、採用によって即戦力を確保するメリットが大きいといえます。

2. 「育成」が適しているケース

既存の社員の中からポテンシャルのある人材を選抜し、広告運用者として育成する方法です。長期的な視点で組織を構築したい場合に適しています。

  • メリット: 自社の事業や文化を深く理解しているため、カルチャーフィットの心配がありません。採用コストを抑えられ、育成を通じて得たノウハウは完全に社内の資産となります。
  • デメリット: 一人前の運用者になるまでには一定の学習期間と実務経験が必要であり、成果が出るまでに時間がかかります。また、育成を担う上司や外部の研修プログラムなど、適切な教育環境を整える必要があります。
  • こんな企業におすすめ:
    • 長期的な視点でマーケティング組織の内製化を進めたい企業
    • 事業への深い理解を持つ人材に運用を任せたい企業
    • 採用コストを抑えつつ、社内にノウハウを蓄積したい企業

3. 判断基準の比較表

自社の状況を客観的に評価するために、以下の比較表を参考にしてください。どちらか一方を選ぶだけでなく、まずは育成からスタートし、組織拡大のフェーズで経験者を採用するといったハイブリッド型も有効な戦略です。

観点採用が適している育成が適している
スピード◎(即戦力として早期に成果を期待できる)△(成果が出るまで数ヶ月〜1年程度の時間が必要)
コスト△(採用コストと高い人件費が発生)◯(研修費用はかかるが、採用コストや人件費は抑えやすい)
カルチャーフィット△(スキルはあっても文化に馴染めないリスクがある)◎(既に自社の文化を理解しているためミスマッチが少ない)
ノウハウの独自性△(前職のやり方に固執し、自社に合わない可能性がある)◎(自社の事業に特化した独自のノウハウを構築できる)
教育体制◯(OJT中心で済む場合が多い)△(体系的な研修プログラムや指導者の存在が不可欠)

広告運用人材の育成なら実務研修を完備したデジプロへ

インハウス化・法人研修のイメージ

社内人材の育成を選択したものの、「何から教えればいいかわからない」「指導できる経験者がいない」といった課題に直面する企業は少なくありません。そのような課題を解決するのが、実践的なWebマーケティング研修を提供するデジプロです。デジプロは、体系的な知識と実践スキルを両立させ、貴社のインハウス化を強力にサポートします。

1. 現役プロマーケターによる実践的なマンツーマン指導

デジプロの強みは、現役で活躍するプロのマーケターが講師を務める点です。座学で知識を学ぶだけでなく、講師とのマンツーマン指導を通じて、実務で直面する具体的な課題の解決方法を学べます。理論と実践のギャップを埋め、明日から使えるスキルを確実に習得できます。

2. 主要広告媒体を網羅したカリキュラム

GoogleやYahoo!のリスティング広告、Meta(Facebook/Instagram)広告、X(旧Twitter)広告、LINE広告など、主要なWeb広告媒体の運用スキルを網羅的に学習できます。特定の媒体に偏ることなく、自社のターゲット顧客や目的に応じて自社に合った広告戦略を立案・実行できる人材を育成します。

3. 企業課題に合わせた研修内容のカスタマイズ

デジプロの法人研修では、企業ごとの事業内容やマーケティング課題に合わせてカリキュラムをカスタマイズできます。「BtoB向けのリード獲得を強化したい」「ECサイトの売上を伸ばしたい」といった具体的な目標に対し、自社に合った研修プランを設計し、最短距離でのゴール達成を支援します。

4. オンライン完結で全国どこからでも受講可能

研修はすべてオンラインで完結するため、場所を選ばずに受講できます。地方に拠点を置く企業や、複数の支社で同時に研修を実施したい場合でも、質の高い教育機会を従業員に提供できます。移動時間やコストを気にすることなく、効率的に学習を進められます。

デジプロの導入事例

株式会社アサインの研修事例

株式会社アサイン様

  • 課題: キャリア支援事業を展開する中で、Webマーケティングの経験者が社内におらず、広告運用を完全に外部委託している状態でした。社内にノウハウが蓄積されず、スピーディーな施策展開ができないことに課題を感じていました。
  • デジプロ導入: 担当者がデジプロの法人研修を受講。マーケティングの基本理論から主要なデジタルマーケティングチャネルの概要、そしてリスティング広告の実践的な運用方法までを体系的に学習しました。
  • 成果: 研修で得た知識を活かしてインハウス運用を開始した結果、事業の根幹である転職相談者数が10倍に成長。広告経由のエントリー数も月間2桁から3桁へと大きく増加させることに成功しました。
  • 詳細: 【法人研修】未経験からインハウス化を実現し、転職相談者数が10倍に!/株式会社アサイン様

広告運用のインハウス化を成功させる第一歩は、自社に必要な人材要件を正しく定義し、採用・育成の方針を固めることです。育成によるインハウス化をお考えなら、まずはデジプロの法人研修プランをご相談ください。その他の導入事例はデジプロの導入事例からご覧いただけます。


参考・出典