AppleのITPや、GoogleのサードパーティCookie廃止に向けた取り組みなどからわかるように、インターネット広告の1フォーマットであるディスプレイ広告は窮地に立たされています。
ディスプレイ広告はリマーケティング・リターゲティングと呼ばれる、いわゆる追っかけ広告を中心に活用されているが、その追っかけ自体が今後どんどん難しくなっていくという状況です。
そんな中Criteoの広告は目にする機会が非常に多く、その勢いの衰えを感じないマーケターも少なくはないと思います。※ただ売上高でみると、実はそんなに成長はしていないようです。(Criteo2019年第2四半期の業績)
今回はCriteoを始めとするダイナミック広告の仕組みについて解説したいと思います。
目次
Criteoとは?
Criteoはフランスに本社を置く、インターネット広告のプラットフォーム事業を展開している会社です。かんたんにいえば、Criteoが持っている枠に対して、Criteoの広告を配信することができます。
特徴的なのはユーザーに適したクリエイティブを配信するダイナミック広告・動的広告と呼ばれるフォーマットを採用している点と、それらをユーザーの閲覧情報に基づいて配信(リマーケティング)するため、その2つの言葉を合体させダイナミックリマーケティングという商品を中心に販売しているということです。
またCriteoはYahoo面に対して強い買付力を持った配信媒体ということも特徴の一つです。
Criteoのクリエイティブは以下のような見た目をしています。
画像右上の▷マークがあれば、それはほとんどCriteoだと言っても過言ではありません。どの媒体から配信されているかは、このマークをクリックすれば知ることができます。
ユーザーが見た商品情報を元に、この図内の「商品画像」が生成される仕組みとなっているため、とてもユーザーとの親和性が高く、高パフォーマンスを発揮できる手段となるのです。
またCriteoとはDSPなのか?と考える人も少なからずいると思います。一般的にDSPはCPM入札が主流なのですが、CriteoはCPC入札であるため困惑してしまうと思います。
あくまで推論の範囲内ですが、CriteoはDSPと考えても問題ないと思います。詳しくは次に解説するDSP・ADNWの入札の仕組みで紹介したいと思います。
ダイナミックリマーケティングの仕組み
そもそもリマーケティングとは?
さて、前述の通りダイナミックリマーケティングは「ユーザーの閲覧情報を元に、クリエイティブを生成するもの」だと説明しました。
では具体的に、どのような仕組みで動いているのでしょうか?
そもそもリマーケティングは、Criteo含め、GoogleやYahooでも採用されているリマーケティングタグ(リターゲティングタグ)で、ユーザーにCookieを付与し、そのCookie情報を使ってユーザーを追跡します。
最近ではITP対策としてグローバルサイトタグや、サイトジェネラルタグなど名称は変わり、且つ仕組みも若干変わっていますが根本は同じです。
Cookieというと少し難しく聞こえるかもしれませんが、かんたんに言えばユーザーごとに目印をつけているようなものです。
その目印は実は簡単に消すことができるのですが、広告以外にもCookieは色々なことに活用されているため、定期的に削除してしまうと逆に不便になってしまうということもあります。例えばSNSのログインなどに使われています。
またCookieは各ユーザーに対して固有のものが付与されるため、AさんとBさんのCookieは全く同じもの、ということにはなりません。全く同じものになってしまったら、AさんのFacebookにBさんもログインできてしまうことになってしまいます。
ポイント:Cookieとはユーザーごとに目印をつけること
Cookieに追加の情報を乗せる
ダイナミックリマーケティングは、このCookieの技術に更に追加の情報を乗せることから始まります。
今までは、そのサイトに設置してあるリマーケティングタグに触れたか、触れていないか。ということのみの情報しか取得していませんでしたが、
Criteoはじめ、GoogleやYahoo、Facebook、Logicadなどでは、このCookieに追加の情報を乗せることによって、ユーザーがどの商品を見たのかという情報を取得しています。
その商品情報は大規模な処理をしやすいように、商品IDなどで取得されるケースが殆どです。
このように商品ID 123を見たユーザーにはID:123を、商品ID ABCを見たユーザーにはID:ABCを乗せるようなイメージです。
商品IDをタグに乗せる際には殆どの場合でjavascriptが使われており、Webマーケターにとってjavascriptの基本的な知識は習得しておいて損はないでしょう。
Google広告のダイナミックリマーケティングタグ(イベントスニペット)を見てみましょう。(Google広告ヘルプ参照: https://support.google.com/google-ads/answer/7305793)
<script>
gtag('event','view_item', {
'value': 998.55,
'items': [
{
'id': 1234,
'google_business_vertical': 'retail'
},
{
'id': 45678,
'google_business_vertical': 'retail'
}
]
});
</script>
このコードに記載されている「’id’: 1234」「’id’: 45678」が商品IDにあたります。このような情報をリマーケティングタグに与えることで、Cookieに商品情報を残しておくことが可能になります。
ポイント:タグ・Cookieに追加情報を乗せることで、閲覧商品を判別する
クリエイティブが生成される流れ
タグ・Cookieで閲覧商品の情報を取得していることは分かりましたが、クリエイティブはどのように生成されているのでしょうか?
まずはダイナミッククリエイティブではなく、スタティック(静的)クリエイティブから考えていきましょう。
非常にざっくりですが、このような仕組みとなっています。
広告主は管理画面上にバナーを入稿し、登録されたバナーはサーバーに保存されています。
広告オークションに勝った段階で広告枠はサーバーに画像提供のリクエストを送り、それに応じてサーバーから広告バナーを返しています。静的バナーの仕組みは直感的に分かりやすいですね。
もっと細かく説明するとキリがないので説明はしませんが、ざっくりこんな理解であれば問題ないと思います。
ではダイナミッククリエイティブの場合はどうでしょうか。
まず自動的に生成される商品画像部分についてですが、ここには画像URLが使用されています。
突然画像URLと言われても、と思うかもしれませんが落ち着きましょう。
ダイナミッククリエイティブは一般的に商品フィードと呼ばれる、商品IDや商品名、価格、そして画像URLなどがセットになったデータ一覧を使用して広告を生成します。
自動的に生成されるクリエイティブは、このデータ一覧内にある画像URLを使用されるというわけです。
例えばあるサイトで100個の商品を扱っていたとして、仮に1つ1つのクリエイティブを作成して訴求しようとすると100つの広告バナーが必要となってしまいます。
このように商品フィードという形で準備しておけば、画像URLを使用して自動的に広告が生成できるようになります。
仕組みは以下の図のようになります。
ポイント:ダイナミッククリエイティブはフィードを元に生成される
ダイナミックリマーケティングの今後
今回はダイナミックリマーケティングの仕組みについて解説しました。
冒頭に述べた通りリマーケティング配信は、AppleのITPやGoogleの脱Cookie宣言から厳しい状況にあるということは変わりありません。
そんな中でこの素晴らしい技術であるダイナミックリマーケティングは今後どうなっていくのでしょうか?
少なくとも言えることはCookieに依存しないFacebookやInstagram、LINEなどのプラットフォーム(アプリ)においては、ダイナミックリマーケティングは今後も活躍し続けると思います。
またGoogleについてはYoutubeやGmail、Googleマップなどの様々なサービスを通じて、Googleログインユーザーの興味関心を高い精度で導き、動的プロスペクティング配信に力を入れていくのでは?と考えています。
特にGoogleマップは直近のアップデートでSNS要素が少し足され、今後より多くのユーザー情報がGoogleに集まっていくことが予想されます。
このような状況の中、はっきり言ってCriteoはかなり厳しい状況下にあるといっても過言ではありません。
Criteoは自社会員を保有したサービスを展開しておらず、Cookieに強く依存しているため、プロスペクティング配信の予測精度もGoogle・Facebookに比べ低いでしょう。
でもなぜAppleのITPが施行された中で、Criteoはしぶとく生き残っているのでしょうか?それは次回解説したいと思います。