【基礎知識】マーケティングの多様な定義とその変遷

マーケティングという言葉は、一般的に製品やサービスを消費者に効果的に提供するための活動やプロセスのことを指して使われています。しかし、このような意味も時代によって変化してきたもので、今後も少しずつ変わっていくことが予想されます。この記事では、マーケティングという言葉の歴史やそれに伴う変遷に注目して定義を探っていきます。

  • 日本とアメリカのマーケティングの定義
  • 著名なマーケターによるマーケティングの定義
  • マーケティング定義の共通項
  • マーケティング定義の変遷
  • 現代のマーケティング
  • まとめ
2024年11月05日 2024年11月05日
楓 真瀬莉

皆さんはマーケティングと聞いて何を思い浮かべるでしょうか。

この問いに対して、著名人ならどう答えるでしょうか。もしくは、マーケティングを始めたばかりの頃ならどう答えたでしょうか。

この記事では、日本やアメリカ、著名なマーケターなどが発するそれぞれの定義について分析することで、マーケティングの本質を探っていきます。

日本とアメリカのマーケティングの定義

マーケティングという言葉は、一般的に製品やサービスを消費者に効果的に提供するための活動やプロセスのことを指して使われています。

具体的には、市場調査、製品開発、価格設定、プロモーション、流通などの行為を指し、消費者のニーズや欲求を満たし、企業の売上や利益を向上させることが主な目的として捉えられています。

しかし、厳密な定義としてはどうでしょうか。

日本マーケティング協会によると、

  • 「顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセス」

がマーケティングの定義であるとされています。(公益社団法人 日本マーケティング協会

次に、マーケティングという考え方の発祥の地であるアメリカの定義も確認してみます。

アメリカマーケティング協会は

  • 「マーケティングとは、パートナー、クライアント、顧客、そして社会全体にとって価値あるものを交換し、創造し、伝達し、届けるプロセスや一連の制度、またその活動である」

としています。(American Marketing Association

一般に捉えられている意味よりも広い定義であることが分かります。

著名なマーケターによるマーケティングの定義

次に、著名なマーケターや学者はどのように捉えているのかについて探っていきます。

この記事では、フィリップ・コトラー、ピーター・ドラッカー、セス・ゴーディンの発言を参照します。

フィリップ・コトラー

フィリップ・コトラーはマーケティングの定義を「特定の市場のニーズを満たすために価値を創造し、提供し、伝達する科学と芸術」としています。

マーケティングを、顧客のニーズと欲求を理解し、それに応じた優れた価値を提供する戦略を策定する過程であると捉えています。

ピーター・ドラッカー

ピーター・ドラッカーは、「マーケティングの目的は、顧客を知り、理解することであり、製品やサービスが顧客に適合し、それ自体が売れるようにすることである」としています。

これは、顧客のニーズを理解し、それを満たす製品やサービスを提供することで、自然に商品が売れるようにすることを意味します。

セス・ゴーディン

セス・ゴーディンはマーケティングを「世界に変化をもたらし、価値を提供する行為」として定義しており、単なる広告や販売促進とは異なるとしているのが特徴です。

彼の視点では、マーケティングは顧客の生活を改善するための総合的なアプローチです 。

マーケティング定義の共通項

ここまで日米のマーケティング協会や著名なマーケターなどが提唱するマーケティングの定義を確認してきました。

それぞれの定義から本質的な部分を抜き出すために、各定義の共通項を探っていきます。

価値の創造

今まで見てきたすべての定義で「価値の創造」について触れられています。

顧客や社会に対して価値を提供することがマーケティングの中心的な役割として認識されていると考えられます。

  • 日本マーケティング協会:顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させる
  • アメリカマーケティング協会:パートナー、クライアント、顧客、そして社会全体にとって価値あるものを創造する
  • フィリップ・コトラー:価値を創造し、提供し、伝達する科学と芸術。
  • ピーター・ドラッカー:顧客のニーズを満たす製品やサービスを提供することで、自然に商品が売れるようにすること。
  • セス・ゴーディン:価値を提供し、世界に変化をもたらすこと。

顧客中心

すべての定義で顧客についても触れています。

顧客のニーズや欲求を理解し、それに応じた価値を提供することが共通のテーマとなっていることが分かります。

  • 日本マーケティング協会:顧客や社会と共に価値を創造する。
  • アメリカマーケティング協会:パートナー、クライアント、顧客、そして社会全体にとって価値のあるものを創造する。
  • フィリップ・コトラー:顧客のニーズと欲求を理解し、それに応じた価値を提供する戦略を策定すること。
  • ピーター・ドラッカー:顧客を知り、理解し、製品やサービスが顧客に適合するようにすること。
  • セス・ゴーディン:

持続可能性と社会貢献

日本マーケティング協会の定義では、明確に持続可能な社会の実現について言及されており、ほかの定義でも間接的に持続可能性や社会貢献の要素を確認することができます。

  • 日本マーケティング協会:より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセス。
  • フィリップコトラー:顧客の生活を改善するための総合的なアプローチ。
  • セス・ゴーディン:世界に変化をもたらす行為。

プロセスと活動

また、マーケティングという行為は一時的なものでなく、継続的に行われるプロセスであると捉えられています。

  • 日本マーケティング協会:構想でありプロセス。
  • アメリカマーケティング協会:プロセスや一連の制度、またその活動である。
  • フィリップ・コトラー:価値を創造し、提供し、伝達するプロセス。

マーケティング定義の変遷

次に、マーケティング定義の変遷について確認していきます。

マーケティングは我々の生活と密接にかかわるものであり、そのためその定義は時代と共に変化してきました。技術の進歩、消費者行動の変化、そして社会的価値観の変化が、主な背景として挙げられます。

伝統的なマーケティング

初期のマーケティングは主に製品志向であり、製品をいかに効果的に売るかが焦点となっていました。

そのため、マーケティングは販売促進活動の一環として捉えられ、広告や販売技術が重視されました。

顧客志向のマーケティング

1960年代から1980年代にかけて、マーケティングの焦点は製品から顧客へとシフトしました。

この時期、企業は顧客のニーズや欲求を理解し、それに応じた製品やサービスを提供することの重要性を認識しました。ピーター・ドラッカーの「顧客を知り、理解すること」という定義がこの時期を象徴しています。

関係性マーケティング

1990年代以降、関係性マーケティングという概念が登場しました。

これは、顧客との長期的な関係を構築し、維持することに重点を置くものです。

顧客ロイヤルティの向上やリピート購入の促進が重要視されました。フィリップ・コトラーの「価値の創造と提供」は、このアプローチを反映しています。

デジタルマーケティングとソーシャルメディア

21世紀に入り、インターネットとデジタル技術の普及によってマーケティングの手法は大きく変化しました。

ソーシャルメディアの登場により、消費者とのインタラクションが容易になり、リアルタイムでのフィードバックが可能となりました。セス・ゴーディンの「世界に変化をもたらす行為」という定義は、デジタル時代におけるマーケティングの新しい役割を示しています。

現代のマーケティング

現代のマーケティングは、技術の進歩や消費者行動ととも複雑化・多様化が進んでいます。

顧客の期待やニーズに迅速に、時にリアルタイムで対応し、パーソナライズされた体験を提供することが求められています。

持続可能性や社会的責任も企業の重要なマーケティング要素となっています。

データ駆動型マーケティング

多様化されたマーケティングの一つにデータ駆動型マーケティングというものがあります。

データ駆動型マーケティングでは、データの分析をもとにマーケティングを行います。大量のデータを収集・分析してマーケティングの意思決定に活用します。

これを可能にしたのが、ビッグデータとアナリティクスです。

これによって、企業は顧客の行動を詳細に分析し、より精緻なターゲティングとパーソナライゼーションが可能となっています。

データ駆動型マーケティングを行うことでマーケティング活動の効果を最大化し、顧客満足度を向上させることができます。

エクスペリエンスマーケティング

エクスペリエンスマーケティングも、マーケティングの多様化に伴って提唱された方法の一つです。

これは体験型マーケティングとも呼ばれ、顧客が商品やサービスとどのように関わり、その過程でどのような価値を感じるかに焦点を当てたマーケティング手法です。

製品やサービスの比較が容易になったことから、他社との差別化のために行われるようになりました。現在では、顧客もブランドとの体験を重視するようになっています。

具体的には、商品やサービスの提供だけでなく、購入や使用の前後・過程において顧客に強い印象や感動を与えるような体験を設計し、それを提供しています。

エクスペリエンスマーケティングは、単なる製品やサービスの提供に留まらず、顧客との深いつながりを築き、長期的な関係を育むための重要なアプローチです。

ソーシャルレスポンシビリティ

マーケティングにおいて、ソーシャルレスポンシビリティ(社会的責任)とは、企業が社会に対して責任を持ち、社会的・環境的な課題に対して積極的に取り組む姿勢を指します。

これは、企業が単に利益を追求するだけでなく、倫理的に正しい行動をとり、持続可能な経営方針や戦略を採用することを意味します。

消費行動の多様化によって、顧客は商品やサービスのみでなく、企業の姿勢などにも目を向けるようになりました。そのため、現代のマーケティング戦略の重要な要素となっています。

ソーシャルレスポンシビリティは、単なるマーケティング戦略の一部ではなく、企業全体の戦略と価値観に深く根ざしたアプローチです。これにより、企業は社会に対する信頼と支持を獲得し、長期的な成功を収めることができます。

まとめ

マーケティングの定義は人によって異なることがありますが、多くの人に共通するのは、「顧客を中心に」「持続可能性や社会貢献」を前提として「価値を創造する」「プロセスや活動」のことを指すという点でした。

また、このような意味も時代によって変化してきたもので、今後も少しずつ変わっていくことが予想されます。

マーケティングという言葉の指す領域を明確にし、自身の中での定義を確立することで、アウトプットに活かしていきましょう。

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