GoogleのSDCが進化!最適化されたターゲィング(Optimized Targeting)について徹底解説!

SDCが最適化ターゲティングに移行

SDCとは?

Googleにはスマートディスプレイキャンペーン – Smart Display Campaign(以下SDC)という、独自のプロダクトを2017年から展開してきました。

SDCは『3つの自動化』を強みとして、広告主のマーケティングにかかる工数を軽減しながらパフォーマンス最大化を目指したディスプレイ広告の配信手法の1つです。

『3つの自動化』は、『クリエイティブ自動化』『ターゲティング自動化』『入札自動化』で構成されており、フルローンチした2017年当時はどれも革新的なものでした。

『クリエイティブ自動化』は、今では一般的に使われるようになったレスポンシブディスプレイ広告と同一の広告登録方法を採用しており、1つの広告に見出しや説明文、画像や動画アセットを登録することで、ユーザーに合わせて登録アセットを組み合わせてクリエイティブが生成されるというものです。

『ターゲティング自動化』は、SDCにおいて特定のターゲティングを設定することはできず(除外は可能)、すべてGoogleが保有する独自のシグナルに基づき、コンバージョンに近いユーザーを自動的に見つけ出し、配信をするというものです。

『入札自動化』は、SDCにおいて個別クリック単価を設定することはできず、目標コンバージョン単価(tCPA)、コンバージョンの最大化(Max Conversion)、目標広告費用対効果(tROAS)いずれかの入札戦略しか使用することができません。

またSDCではコンバージョンに対して費用を支払うことも可能(デフォルトはクリックに対する支払い)で、とにかくコンバージョンに特化した配信手法だと言えます。

SDCは流行らなかった?

まさにディスプレイ広告界の黒船ともいえるSDCですが、筆者の肌感では日本においてSDCの利用率は低いと思います。

その理由は大きく3つです。

  1. 最適化に時間がかかる
  2. 運用レバーが少ない
  3. Google広告のコンバージョンを評価していない

1つ目の理由は、『最適化に時間がかかる』です。SDCは先述の通り、全てGoogleの機械学習に任せるというもので、いきなり高い成果が出るわけではなく、約2週間の学習期間が必要です。

つまり2週間の間は成果が出ない不安定な時期が続くため、広告担当者としては非常に辛い期間となります。SDCを実施する場合、最初の2週間は『投資と捉えてじっくり待つ』ことが重要なのですが、この短いようで長い2週間を待てずに諦めてしまう広告主が多いように感じます。

当然、2週間待ったからと言って必ず高い成果が出るという保証もないため、それならわざわざSDCにチャレンジする必要もないと判断している広告主も多いのではないでしょうか。

2つ目の理由は、『運用レバーが少ない』です。SDCの最大の特徴である『3つの自動化』のおかげで、マーケティング工数は大きく削減されることは事実です。

しかしSDCで成果が出なかった時に、広告担当者が実行できるアクションは『広告アセットの差し替え』くらいです。

除外ターゲットの追加や入札戦略の変更等も選択肢にはありますが、そこまでインパクトがある改善施策とは思えません。

また広告アセットを差し替えたところで、SDCのターゲティングがブラックボックスである以上、特定のターゲティングに配信をするリマーケティングに比べると、PDCAの質が低下してしまいます。

同じく成果が良い時もSDCを拡大する方法が少なく、配信のコントロールが難しく『全てがGoogle任せ』であるため、多くの広告担当者はSDCを避ける傾向にあると思います。

3つの目の理由は『Google広告のコンバージョンを評価していない』です。多くの広告主はGoogleだけでなく、YahooやFacebookなどの広告媒体にも出稿をしているため、広告の評価を各媒体上のコンバージョンではなく、Google Analyticsやアドエビスなどの分析・計測ツールを介して広告評価をしています。

SDCは、Google広告のコンバージョン数を増やすことに特化しているため、『Google広告のコンバージョンは増えているが、計測ツール上のコンバージョンが増えていない』という事象に陥りやすいのです。

多くの分析・計測ルールではラストセッション(コンバージョンが発生したセッションの参照元)を評価することに対し、Google広告のコンバージョンは過去30日以内に発生したクリックが、コンバージョンまでの経路に関与していれば評価の対象になります。

このような計測方法のズレがあるため、『SDCでは成果が出ない』と考えている広告担当が多く、SDCが日本では流行っていないように感じます。

最適化されたターゲティング

そのような背景が原因かは定かではありませんが、Google広告アカウントの一部ではSDCが消え、新たに『最適化されたターゲティング(Optimized Targeting)』という機能が追加されています。

2021年8月時点の公式ヘルプページによると、「この機能は段階的に展開を進めており、一部の Google 広告アカウントではまだご利用いただけません。」とのことなので、今後徐々に使用できるアカウントが増えていくことになるでしょう。

またファインドキャンペーンと動画キャンペーンにおいては、既に全てのアカウントで最適化されたターゲティングを使用することができ、完全に反映がされていないのはディスプレイキャンペーンのみとなります。

ディスプレイキャンペーンにおいて、既に最適化されたターゲティングが反映されたアカウントを確認すると、SDCを作成することができなくなっているため、実質的にSDCが最適化されたターゲティングに移行されたと捉えても間違いはないでしょう。

最適化されたターゲティングの機能

新オプション『ターゲティングシグナル』

最適化されたターゲティングを使用する際に、『ターゲティングシグナル』というオプションを使用できるようになりました。

このターゲティングシグナルを使用すると、最適化されたターゲティングを介して利用できるターゲィングは大きく3つに整理することができます。

それぞれの公式ヘルプを細かく読み取ると、最適化されたターゲティングとSDCのターゲティング手法は若干異なるようです。

以下、最適化されたターゲティングに関する公式ヘルプの引用です。

リアルタイムのコンバージョン データに基づき、コンバージョンに至ったユーザーに類似したプロファイルを作成することで、コンバージョンに至る可能性の高いユーザーにリーチを拡張します。

一方で、SDCの公式ヘルプページでは以下のように説明されています。

関心を示しているユーザーから、購入しようとしているユーザーまで、購買サイクルのあらゆる段階のユーザーにアプローチできます。

コンバージョンに至る可能性が高いユーザーに広告を表示し、設定したコンバージョン単価でできるだけ多くのコンバージョンを獲得できるよう調整されます。

SDCは、潜在層から顕在層まで幅広いユーザーの中から、コンバージョンに至る可能性が高いユーザーを探し出すターゲティングであるのに対し、最適化されたターゲティングは実際にコンバージョンに至ったユーザーから類似ユーザーを探し出すという手法であるようです。

更には最適化されたターゲティングに『ターゲティングシグナル』を追加することで、予め類似する条件を設定することができるという点が、大きなアップデートだと言えるでしょう。

『オーディエンス拡張』とは違う?

このターゲティングシグナルが、従来より存在していた『オーディエンス拡張(オーディエンススライダー)』と似ていると思った方もいるのではないでしょうか。

こちらも公式ヘルプページに記載がされていますが、厳密には異なるようです。以下、公式ヘルプページの抜粋になります。

オーディエンス拡張: この機能では、陣内氏が手動で選択したオーディエンス セグメントに加えて、「スニーカー セール」のカスタム セグメントや「スポーツ用品」の購買意向の強いセグメントなどの類似セグメントが含まれます。

最適化されたターゲティング: リアルタイムのコンバージョン データに基づき、コンバージョンに至ったユーザーに類似したプロファイルを作成することで、コンバージョンに至る可能性の高いユーザーにリーチを拡張します。そのデータには、ランニング シューズの特定のブランドの Google 検索や、人気のあるスポーツウェアのウェブサイトのクリックなどが含まれます。陣内氏が手動で選択したオーディエンス セグメントは起点となりますが、最適化されたターゲティングでは、選択されているセグメントの枠外でコンバージョンの獲得を目指します。

ものすごく端的にまとめると、オーディエンス拡張は『狭く、ざっくり』、最適化されたターゲティングは『広く、細かく』ユーザーをターゲティングするようです。

いずれにせよSDC観点だけでなく、オーディエンス拡張の観点でもポジティブなアップデートだと言えるでしょう。

クッキーレス時代での活躍に期待

AppleのITPに始まり、Chromeにおいても2023年後半に3rd Party Cookieの廃止が予定されており、今までディスプレイ広告の主力ターゲティングであったリマーケティングは、今後縮小の一途を辿ることは間違いありません。

Googleはリマーケティングの代替としてFLoCという新しいターゲティング手法を、Privacy SandboxというCookieに代わる技術を元に開発を進めているようですが、FLoCがいつリリースされるか等の情報は一切ない上に、FLoCという技術自体を疑問視している人も多いのではないでしょうか。

そんな中で、新たに追加された機能『最適化されたターゲティング』は、今後のクッキーレス時代で活躍していくことが期待されます。

特にGoogleのプラットフォーム上(Youtube、Gmail、Discover面)にしか配信がされないファインドキャンペーンは、リマーケティングではなく類似オーディエンスやカスタムオーディエンス(旧カスタムインテント)と相性の良い広告プロダクトでした。

ファインドキャンペーンでも『最適化されたターゲティング』が使用できるため、今後ファインドキャンペーンの出稿がどんどん増えていくことも予想されます。

もしファインドキャンペーンの成果が良い場合は、まずはファインドキャンペーンから『最適化されたターゲティング』を試しても良いかも知れません。

最適化されたターゲティングで成果を出すためには?

ターゲティングシグナルは設定必須

冒頭でSDCが流行らなかった3つの理由のうち、『最適化に時間がかかる』『運用レバーが少ない』の2つを、このターゲティングシグナルで解決することができます。

先述の通り、ターゲティングシグナルは予め類似する条件を設定することができるため、最適化時間の短縮を実現することができると言えます。

また仮にそれで成果が悪かったとしても、クリエイティブの修正に加え、途中でシグナルを変更することもできるので、運用レバーも増えたと言えるでしょう。

それらを踏まえ、どのようなオーディエンスをシグナルとして追加すればよいでしょうか?

手堅く配信をするなら、シグナルはコンバージョンユーザーのオーディエンスを設定し、同一ユーザーから複数のコンバージョンされたくない場合は、マニュアルターゲティングでコンバージョンユーザーを除外すると良いでしょう。

これらの設定をすることによって、いち早くコンバージョンユーザーに似ているユーザーを見つけ出しつつ、重複コンバージョンを排除することができます。

コンバージョン計測の精度を上げる

これだけでは、SDCが流行らなかった理由の全てを解消できていません。問題は『Google広告のコンバージョンを評価していない』です。こればかりは、今回の最適化されたターゲティングのアップデートだけでは防ぎようがありません。

そのため最適化されたターゲティングとは別に、この問題を解消する方法を紹介します。

その方法とは『KPIとなっているコンバージョンをインポート』することです。例えばGoogle Analyticsで広告の評価している場合は、Google広告とGoogle Analyticsを連携し、Google Analyticsの目標をGoogle広告にインポートすることが可能になります。

またGoogle Analytics以外の分析・計測ツールでも、オフラインコンバージョンのインポート機能を使えば、KPIに沿った最適化が実現できます。

但しこれらを実行する時、注意しなければならないポイントが2つあります。

  1. コンバージョンボリュームが少なくなるため、最適化に必要な数があるか確認する。
  2. オフラインコンバージョンのインポートの場合、コンバージョンデータのリアルタイム性が損なわれる(最適化に影響がある)。

特に2つ目に関して、オフラインコンバージョンの方がかえってパフォーマンスが悪くなる可能性があります。オフラインコンバージョンを使えば必ずしもパフォーマンスが良くなるとは限りません。

ただコンバージョンデータがリアルタイムに連携がされるGoogle Analyticsを広告評価に使用している場合、最適化に使うにしろ使わないにしろ、まずは連携をしてみることをオススメします。

まとめ

クッキーレス時代が近づくにつれ、様々な広告媒体でディスプレイ広告に関するアップデートが盛んに行われています。

それだけでなく、様々な広告媒体は『広告配信の自動化』に向けて日々機能をアップデートし続けています。

そのような激動の時代の中で、デジタルマーケターとして生き残るためには、今回紹介した『最適化されたターゲティング』のような最新アップデートをいち早くキャッチアップすることが非常に重要です。

また最後に紹介した『コンバージョン計測の精度を上げる』など、いかに広告媒体の機械学習に向き合い、新しい方法を発見するスキルも今後必要になってきます。

積極的に『最適化されたターゲティング』を始めとする各媒体の新しい機能を活用し、今後のクッキーレス時代の準備を始めていきましょう。