「インターネット広告を出してみたいけど、どれくらい広告予算を用意すればいいか分からない!」
デジプロの講義中にそういった悩み・相談を受けることが多々あります。
日本を代表する大企業は、ひと月あたり何億、何十億のレベルでインターネット広告に投資しますが、それは潤沢な資金とノウハウがあるからこそ実現できます。
一方で限られた予算内で最大の成果を上げなければならないスタートアップ・中小企業は、最初の広告予算も慎重に決めていかなければなりません。
今回は、インターネット広告を初めて挑戦する方に向けて、広告予算の算出方法について解説をしていきます。
目次
前提:サービスによって広告予算は異なる
前提として、扱うサービスやKPIによって、確保すべき予算は異なります。なぜならそのサービスのビジネスモデルによって、生まれる売上や利益が異なるためです。
例えばインストール時に料金が発生する有料アプリであれば、1回の有料インストールあたり500円~1,000円程度の売上しか発生しません。そのためCPA(1コンバージョンあたりの単価)はせいぜい~400円程度におさめなければなりません。一方で、弁護士相談や探偵相談など、1回の成約によって何十万もの売上が発生するサービスは、目標CPAを50,000円、100,000円に設定することができます。
広告予算が一律100,000円だったとして、有料アプリのインストール単価が100円のとき、合計で1,000コンバージョン(インストール)が発生します。広告主は、この1,000コンバージョンというデータをもとに次なる広告施策の策定をすることができます。
しかし弁護士相談のサービスを運営しておりCPAが50,000円のとき、合計で2コンバージョンしか発生しません。たったの2コンバージョンでクリエイティブや配信メディアの優劣を判断することは難しく、どの広告がユーザーにとって良かったのか分からないまま広告を配信し続けることになってしまいます。
そのため『PDCAを回す』という観点において、「一律100,000円からスタートするのがテッパンです!」という説明は的外れなのです。
広告予算の具体的な計算方法
前置きが長くなってしまいましたが、ここからどのように広告予算を決めていくべきか具体的に解説をしていきます。
有料集客(広告)と無料集客の比率
まず有料集客と無料集客のあるべき比率から考えていきましょう。
有料集客経由のコンバージョンの割合は、全体のコンバージョンに対して20%~30%が最適な状態です。これはあくまで私が今まで数々の企業の広告を運用してきた経験に基づく数字であるため確証につながるデータはありませんが、一つの基準としてみてください。
またこの数字もサービスやビジネスモデルによって異なるのですが、広告用のロングLPを用意して集客を行うようなサービスにおいては、広告比率が50%を超えることもあります。
一旦は『50%以下』であることを前提に計算をしていきます。
例えば広告を配信せずに、月間で100コンバージョン発生するウェブサイトを運営しているとします。このとき、広告経由のコンバージョンが20%~50%になるよう、各レンジの計算すると以下のようになります。
あとはこのコンバージョン数に、目標とするCPAをかけ合わせれば必要とする予算が算出されます。
なぜなら『CPA = COST ÷ CV』であるため、中学生のときに習った移項を使えば『COST = CPA × CV』と計算式を変換できるからです。
目標CPAの求め方
広告予算や有料集客比率と同様、サービスやビジネスモデルによって目標のCPAは異なります。目標CPAを求める一番良い方法は、自社のビジネスモデルを理解し、1コンバージョンあたりどれくらいの売上・利益が発生するのかを把握し、広告にどのような期待をしているのかを考えることです。
「広告は広く多くの人に知ってもらうためのものだから、ROI100%で良い(赤字でもなく黒字でもなくトントンの状態)」と考える企業もいれば、「広告によって利益を最大化したい」と考える企業もいます。
更には「戦略的に、広告は赤字を出しても良いからCVを最大化したい」と考える企業も存在します。
まずはご自身が広告出稿をするサービスのビジネスモデル・収益構造を理解し、その上で広告の立ち位置を明確にし、目標CPAを決定するのが健全な方法です。
目標CPAは5,000円、とまで分かれば算出したコンバーション数を掛け、必要予算を導き出すことができます。月に獲得したいコンバージョン数が50件であれば、必要予算は250,000円となります。
配信前の注意点
月のコンバージョン数は十分か?
冒頭で「合計2コンバージョンしか発生しないと、配信手法やメディアの優劣をつけることができない」と説明しました。
有料集客と無料集客の比率からコンバージョン数を計算したとき、どれくらいのボリュームになったでしょうか?
これもあくまで主観性が強い基準ですが、コンバージョン数が月30件以下の場合は広告を出稿すべきか否かを改めて検討するか、MCV(マイクロコンバージョン)を設定しましょう。
「コンバージョンが少ないから広告を出稿したい」という気持ちも分かりますが、広告を出稿する前に、まずSEOやSNSなど無料で集客できる方法を模索されると良いでしょう。
また無闇に「広告といえばリスティング広告!」と判断せず、すでにあるコンバージョンデータを分析し、どういった層に支持されているサービスかを理解して適切なメディア選定を行うことも重要です。
CVRに改善の余地はないか?
コンバージョン数にもつながる話ですが、サイトCVRも広告出稿前に今一度確認してみましょう。広告出稿前に、サイトのCVRに課題がないかを確認する方法をここで紹介します。
CVRはCV÷CLICKで算出される指標ですが、『CPA = CPC ÷ CVR』の応用で、『CVR = CPC ÷ CPA』とも算出することができます。
この計算式をもとに、特定キーワード群における業界平均CPCが分かれば、自身で設定した目標CPAで割ることで、CVRを算出することができます。
業界平均CPCを調べる手段として、GoogleやYahooが提供している『キーワードプランナー』『キーワードアドバイスツール』が役に立つと思います。
例えば目標CPAを5,000円と設定し、業界の平均CPCが100円だった場合、CVRは100÷5,000で2%となります。
さて、この2%という数字はご自身が運営するサイトCVRと比べ高いでしょうか?それとも低いでしょうか?もし低ければ広告を出稿するよりも、サイトのCVRの改善を優先させたほうが良いかもしれません。
広告戦略もサービスによって異なる
ここまで計算式をもとに、適切な広告予算の求め方や広告出稿前の注意点について解説をしてきました。
最後に、改めて広告戦略はサービスや、そのビジネスの置かれている状況によって異なるということについて述べていきたいと思います。
今まで私は何十社もの企業の広告コンサルティングをおこなってきましたが、多少は似ていてもまったく同じ広告戦略をとっている企業はありませんでした。
目標CPAが違うように広告戦略も企業やサービスによって異なるのです。
新サービスをローンチした企業では「高速でサービス自体のPDCAを回していきたいから、広告流入でとにかく人を呼び込みたい」という要望を受けたり、
また歴が長いサービスを運営している企業では「とにかく目標CPA以内で広告の最適化をしたい」という要望を受けることがありました。
他にも季節性が強い企業は繁忙期に予算を増やしたり、日々のニュースによって大きくトラフィックが変動するような企業では、「突然広告予算を大量に確保したいから手伝って」といった相談を受けることもありました。
デジタル広告はTVやラジオのようなマス広告と比較して、すぐに、簡易に出稿できることが大きな特徴ではありますが、そのぶん『戦略』がおざなりになってしまうケースが多々あります。
どれくらいの広告予算が適正か?を考えると同時に、改めてビジネスやサービスを見つめ直し、広告にどのような期待を持つのか、どのような戦略で配信をしていくのかを改めて考えてみてください。