インサイトとは?ニーズとの違いや見つけ方について
インサイトとは、消費者の行動やニーズの背後にある感情、動機、信念などの深層心理に対する洞察です。消費者がなぜその行動を取るのか、その「理由」に焦点を当てているというのが最も大きな特徴です。インサイトを理解することで、企業はターゲット顧客の具体的なニーズを把握し、より効果的なマーケティング戦略や製品開発を行うことができます。
- インサイトとは
- インサイトとニーズの違い
- インサイトの理解が重要な理由
- インサイトの見つけ方
- インサイトの活用事例
- まとめ
インサイトは、ユーザーの理解を深めるために抑えておくべき要素です。
具体的には、消費者やターゲットの深層心理や行動の背後にある理由や動機のことです。ニーズを深く掘り下げた「その理由」に焦点を当てたものと考えるとわかりやすいです。
この記事では、インサイトの意味やニーズとの違い、実際の活用方法など、例を交えながら分かりやすく解説しています。
インサイトとは
マーケティングにおいて、インサイトは消費者のニーズや欲求、行動パターンを明らかにするための重要な要素です。
具体的には、消費者の行動やニーズの背後にある感情、動機、信念などの深層心理に対する洞察です。消費者がなぜその行動を取るのか、その「理由」に焦点を当てているというのが最も大きな特徴です。
これにより、企業はターゲット顧客の具体的なニーズを把握し、より効果的なマーケティング戦略や製品開発を行うことができます。
インサイトとニーズの違い
簡単に言えば、ニーズは顧客が言語化できる・自覚している欲求、インサイトは言語化できない欲求、欲求になる前の感情自体を指しています。
例えば、30代女性を対象にニーズ調査を行ったとします。その際に多く上がったのが「一人の時間が欲しい」といったものでした。しかし、ニーズ通りに製品を作ったものの、あまり売れ行きが良くありませんでした。その理由を調べた結果、家庭を持つ女性の多くが「自分の時間を持つことに罪悪感を持つ」ということが分かりました。
ニーズ通りに商品を作ったものの、売れ行きが芳しくなかった理由は「自分の時間を持つことに罪悪感を持つ」という深層心理のためでした。この深層心理をインサイトと言います。
このように、ニーズは分かりやすく表面に出てきている欲求であるのに対し、インサイトは深層心理や行動の背後にある理由や動機のことを指します。
ニーズのみでなくインサイトにも注目し、自分時間を持つことは悪いことじゃない、家族のためにもなるという訴求をすることでコンバージョンを伸ばすことができます。
インサイトの理解が重要な理由
ここまでの解説でインサイトとは何なのかがなんとなく分かってきたかと思います。
ここからは、インサイトを理解することがコンバージョンにどのように結びつくのか、インサイトを理解することでどのような良いことがあるのかを解説していきます。
顧客理解を深められる
インサイトを理解することで、顧客の行動や心理を深く理解することができます。
ニーズとの違いでも例示してお伝えした通り、表面的なニーズにとらわれず真のニーズや動機を把握することで、顧客の心に響く商品・サービスを提供することが可能になります。
例えば、スポーツ用品店でランニングシューズを購入する顧客について考えてみます。
この場合、ニーズはランニングシューズが欲しいということです。一方、インサイトとしては、休日に遅く起きてしまうことに対する漠然とした不安感、運動習慣をつけたい、自信を付けたいなどといったものが挙げられます。
同じランニングシューズが欲しいというニーズをとっても、こうしたインサイトに基づいて「ランニングで自信を手に入れる」「ランニングで充実した一日を始める」といった訴求を広告キャンペーンやターゲットに応じて使い分けることで、顧客の心理に迫った訴求を行うことができます。
製品開発・改善につなげられる
インサイトは、製品開発や既存製品の改善などにも役立ちます。
顧客の不満や期待を深く理解することで、製品やサービスの改良点や新しい機能の追加を見つけることができます。
顧客のインサイトを把握し、製品の改善に繋げた例で面白い話があります。
洗濯機を販売するある中国の家電メーカーで故障が相次ぐという事態が起きました。故障の原因を探っていると、ユーザーは洗濯機で衣服だけでなく農作物も洗っていたということが判明しました。メーカー側から見えるニーズは「洗濯機が欲しい」というものでしたが、ユーザーの心理としては「寒い時期に手作業で野菜を洗うのはつらい」「自動で泥を落とせるなら洗濯機でも使いたい」といったものだったのです。
ユーザーのインサイトをくみ取り、製品の改善に取り入れたところ大ヒットし、同メーカーは今様々な農業機械を売り出す大企業になっています。参考
マーケティング精度の向上
顧客のインサイトを理解することでマーケティングの精度を向上させることもできます。
インサイトを基にしたマーケティング戦略を行うことによって、ターゲット顧客に対してより細かで効果的なアプローチが可能になります。広告とターゲットとの関連性が高まり、クリック率やコンバージョン率の向上が期待できます。
例えば、旅行代理店が海外旅行を販売する場合、顧客の表面的なニーズはすべて「旅行に行きたい」というものですが、インサイトを深堀すると「勝手がわからないので手続きはプロに任せたい」「信頼できるプロに提案してほしい」「仕事で疲れているから、短期間でリフレッシュできる旅行を手間をかけることなく簡単に手配したい」など様々なものがあることが分かります。
このようなインサイトに基づいて、「初めての方向け主要観光スポットを回るプラン」「穴場スポット」「安心パック」などそれぞれに向けたメッセージを含んだ広告を作成します。こうすることで、クリック率やコンバージョン数の増加を見込むことができます。
インサイトの見つけ方
では、インサイトを見つけるにはどうしたら良いのでしょうか。
主要なものとしては、
- ユーザーヒアリング
- ユーザー観察
- Webサイトにおける顧客データ分析
- レビューサイトやSNSの確認
などがあります。以下で具体的な手順やポイントなどについて解説していきます。
ユーザーヒアリング
ユーザーヒアリングは、顧客と直接対話することで、定量的なデータでは得られない深い洞察を得ることができる方法です。
特に、インタビュー形式でその場に応じた自由な会話をしてもらうことで、思いがけない視点を得られることがあります。
顧客はどのような課題や不満を抱えているのか、そう思った理由は何なのか深くヒアリングすることで、ニーズにはどのような思考、動機が隠れているのかを特定するためのヒントを得ることができます。
ユーザー観察
ユーザーの行動を直接観察することで、言葉だけでは分からない行動パターンや考えを発見することができます。
実際の店舗に行ってユーザーの様子、行動を観察する方法や、ユーザーがどのページを閲覧してどの商品を購入しているかなどを確認するWebサイトの分析、ユーザーがどのようなコメントや投稿を発信しているか調べるSNSの分析などの手法があります。
実際のユーザーの行動を観察することで、ニーズに繋がるものの明文化するほどでもない些細な思考や動機を垣間見ることができます。
Webサイトにおける顧客データ分析
Webサイトにおける顧客データ分析もユーザー観察の一種です。
具体的には、Webサイトのアクセスログや購買履歴を分析します。こうすることで、ユーザーの行動パターンや傾向を把握することができます。
また、購買前後の行動や背景などのデータを集めて分析することでインサイトと自社製品がマッチするターゲットユーザーの傾向がつかめてきます。
レビューサイトとSNSの確認
レビューサイトやSNSの投稿を確認することも、インサイトの発見に繋がります。
レビューサイトやSNSでユーザーの声や意見を収集することで、ユーザーがどのような点に満足し、どのような点に不満を持っているかを把握することができます。
満足した点や不満に思っている点を総合することで、ユーザーが真に求めているものは何なのか、どういった商品やサービスを使いたいのかといったことが分かってきます。
インサイトの活用事例
旅行代理店を例にして、インサイトの発見からWeb広告に活かすまでの一連の流れを見ていきましょう。
インサイトを広告に活用するには、まずインサイトを特定する必要があります。
ここでは簡単にアンケートを使って、旅行によく行く人は旅行に何を求めているか、旅行にあまり行かない人は、何がネックになっているのかなどを聞きます。
アンケートの結果、旅行によく行くユーザーからは「リフレッシュしたい」「非日常な珍しい体験をしたい」「大切な人との特別な思い出を作りたい」などといった声が集まりました。また、旅行にあまり行かないユーザーからは「家族の趣味や年代を考えると全員が楽しめる旅行は難しいと思う」「予約やプランを練るのが手間」「病気になった場合や治安を考えると海外は不安」「いろいろな情報がありすぎて決めきれない」などの声が挙がりました。
こういったデータを基に、旅行プランとターゲティングセグメントの見直し、広告キャンペーンの訴求内容や見出し文を考えます。以下はターゲットと訴求内容、見出しの例です。
- 「3日間でリフレッシュ!ストレスフリーの週末旅行」短期間でもリフレッシュできるプランを強調した広告を、忙しいビジネスパーソンや都市部に住む人ユーザーをターゲットにして配信します。広告のタイミングを工夫し、週末前の木曜や金曜に集中して配信することでエンゲージメントを向上させることができます。
- 「あなただけの特別な旅をプランニング」「秘境での現地文化体験プラン」といったパーソナライズを強調するコピーとクリエイティブを使用して一般的な観光地よりもユニークな体験を求めるユーザー向けに広告を配信します。ユーザーの過去の検索履歴や興味に基づいたターゲティング広告が効果的です。
- 「家族全員が楽しめるリゾート旅行!」「全ての世代が満足できるプラン」といったメッセージを含む広告を、家族旅行を考えているユーザー向けに配信します。クリエイティブには、家族で楽しんでいるシーンや子ども向けのアクティビティ、大人のリラックススペースなど、家族全員に訴求できる要素を盛り込むことが重要です。
- 「全てお任せ!プロが作る完璧な旅行プラン」計画の煩雑さや予約の手間を感じているターゲット層に向けてパッケージプランの広告を配信します。特に旅行計画で時間を取られたくない忙しいビジネス層には、スマートな予約システムや電話相談サービスを強調した説明文を挿入することで効果的に訴求することができます。
- 「安心・安全な旅行をお約束。専任コンシェルジュがサポート」安全な旅を重視する層に向け、旅行の安全性を訴求する広告セットを使用します。安心感を提供することで、特に家族連れやシニア層からの反応が期待できます。シニア層をメインターゲットにする場合は、リスティング広告やフライヤーが有効です。
ターゲットや訴求ポイントを調節するなど、インサイトをWeb広告に反映させることで、広告がより効果的にターゲットユーザーに響き、広告の効果を高めることができます。
まとめ
インサイトとは、消費者やターゲットの深層心理や行動の背後にある理由や動機のことです。ニーズを深く掘り下げた「その理由」に焦点を当てたものと考えるとわかりやすいです。
インサイトを理解することで、顧客理解を深められる、製品開発・改善につながる、マーケティング精度の向上などのメリットがあります。
また、インサイトを見つけるための方法としては、ユーザーヒアリング、ユーザー観察、Webサイトにおける顧客データ分析、レビューサイトやSNSの確認などがあります。
インサイトを理解することで、より効果的に消費者のニーズに応えることが可能です。