用語集 > Digital Marketing > PEST分析

PEST分析

2024年06月14日 2024年11月14日

PEST分析とは

PEST分析は、自社の事業を取り巻く環境について、マクロな視点で分析するためのフレームワークです。このフレームワークの結果、それらの環境要因が現在もしくは今後、どのように影響していくか把握することができます。

この記事では、PEST分析の詳しい説明や、実際に行う上での注意点、手順などを解説しています。

PEST分析とは

PEST分析のPESTとは、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会文化)、Technology(技術)の頭文字を取ったものです。分析対象の外部要因について、この4分野に分けて分析を行っていくというフレームワークです。

市場や事業を取り巻く環境を把握することで、自社が今後取るべき方針やマーケティング戦略の立案に役立てるのが目的です。

Politics(政治)

PEST分析のPはPoliticsの頭文字で、文字通り政治的要因を指します。

政治的要因は、事業やそれを施行する組織に大きな影響を与える要素です。具体的には、法律、規制、政策、および政治的安定性などの要素を分析します。

事業に直接的にかかわる要因としては、税制の変更や規制の厳格化または緩和、貿易政策の変更などが挙げられます。また、政府の立場や政治的な方針の変化は、事業の成長性や市場規模などに大きな影響を与える可能性があります。

また、政治的安定性も重要です。直接的に事業に関わる要因ではないですが、不安定な政治状況や政治的な混乱は、ビジネスにとってリスクをもたらす可能性があります。政治的な不安定要因がある国や地域で事業を展開する場合、企業はそのリスクを評価し、適切な対策を講じる必要があります。

Economy(経済)

PEST分析のEはEconomyを指し、これも文字通り経済的要因を意味しています。

経済的要因について分析する際には、まず経済成長率や景気循環を理解することが重要です。景気が拡大している場合、消費が増え、市場が拡大する傾向があります。一方、景気後退や不況の場合、消費者はできるだけ購買を控える傾向にあるので、市場が縮小する可能性があります。

さらに、インフレ率やデフレ率などの経済指標も重要です。インフレ率が高い場合、原価をはじめとするコストが上昇し、利益率が低下する可能性があります。一方、デフレ率が高い場合、物価とともに消費者の賃金も下がり、その結果消費者の購買力が低下する可能性があります。

また、通貨の安定性や為替レートの変動も経済的な要因です。為替レートの変動は、輸出入業者に影響を与え、国際市場で競争力を左右する要因となります。通貨の安定性は、企業の国内および国際的な取引における信頼性と安定性に直接影響します。

Society(社会文化)

PEST分析のSはSocietyの頭文字です。直訳では社会といった意味になりますが、PEST分析においては社会や文化、ライフスタイルなどを含めた複合的な要因を指しています。企業や組織をはじめ消費者たちも活動する社会環境に関する要因を評価するための重要な要素です。

まず、マクロな視点として人口動向や人口構成を理解することが重要です。人口の増減や構成の変化は、市場の規模や需要の変化に影響を与えます。例えば、高齢化社会では高齢者向けの商品やサービスに対する需要が増加する傾向があります。

また、社会的な価値観や傾向などの文化的要素も重要です。人々の価値観や態度の変化は、市場のニーズやトレンドに影響を与えます。例えば、パンデミックによる価値観やライフスタイルの変化は、その後の消費行動を大きく変えました。

さらに、社会的な問題や課題も重要な要素です。貧困、格差、健康問題、教育問題などの社会的な課題は、企業や組織にとってビジネス機会やリスクを生み出す可能性があります。

Technology(技術)

PEST分析のTはTechnologyの頭文字で、技術的要因を指しています。この要素は、特に商品のグレードや他社との競争に密接にかかわっています。

技術的な要因の分析については、まず技術の進歩やイノベーションの動向を理解することが重要です。新しい技術や製品が市場に導入されることで、既存の事業に大きな影響を与え、市場構造が変化する可能性があります。

また、技術の変化が組織の業務プロセスや効率性に与える影響も考慮する必要があります。新しい技術の導入は、業務の効率化につながり、生産性の向上をもたらす可能性があります。

技術環境の変化を適切に把握し、それに対応することは、企業や組織の競争力を維持し、継続的な成長を実現するために不可欠です。

PEST分析の目的

PEST分析の目的は、冒頭でもお伝えした通り、事業や市場を取り巻く環境を4つの視点から分析することで、適切な事業戦略の立案に活かすことです。

PEST分析のようなマクロな視点での環境分析は、市場環境を中長期的な視点で捉えることができるため、成長性や将来性などを加味できることが特徴です。

PEST分析を行う手順

では、実際にPEST分析を行う際の手順を解説します。

1.目的とゴールを設定

まずは、目的とゴールを設定します。

何のために事業を進めるのか、達成すべきゴールは何なのかを言語化します。

PEST分析で分析する対象は外部環境全体と非常に広く、予想外に時間がとられてしまうことも珍しくありません。その際に、目的やゴールなどが定まっていると、深く調べるべき領域や必要ない情報の取捨選択を素早く行うことができます。

PEST分析を効率的に行うためにも、何を目的とするかは必ず最初に設定するようにしましょう。

2.情報収集

目的とゴールが設定できたら、情報を集めていきます。

情報を集める際には、国が発表している統計やシンクタンクのレポート、専門誌の記事など、信頼性の高い情報のみを集めるということに留意してください。手元に残す情報は、自社や事業に影響を及ぼすか、最初に設定したゴールに関わりがあるかといった視点で取捨選択を行うことが重要です。

また、集めた情報はPESTの4要素に分類します。集めた情報が複数の要素にまたがっている場合もありますが、その場合分類は大まかなもので構いません。4要素への分類は、あくまで戦略を立てる際の指標に過ぎないため、厳密に分けることに時間を使いすぎないように注意してください。

3.事実と解釈に分類

4つの要素に分類した情報を、さらに「事実」であるか「解釈」であるかに分けていきます。

事実はどの角度から誰が見ても否定しようがないこと、解釈は立場によって意見が分かれるものです。戦略を立案する際には、事実のみを参考にすることが望ましいとされています。主観や解釈を事業戦略の根拠にしてしまうと思ったように結果を出せないケースが多いです。

4.機会と脅威に分類

事実であると分類された情報を、さらに「機会」か「脅威」かという基準で分けていきます。

この時、ある情報に対して機会であると感じても、別の支店では脅威であると判断できる場合があります。例えば、新型コロナウイルスのパンデミックについて、多くの小売業にとっては脅威ですが、マスクなど衛生用品を専門とする小売業にとっては機会であると捉えることができます。

このように、立場によって機会か脅威か判断できないことがありますが、自社にはどのような影響を与えるのかといった視点で分類することが大切です。


他に、外部要因を機会と脅威に分類するフレームワークとしてSWOT分析というものがあります。分類したデータを流用することもできるので、ぜひこちらも併せてご覧ください。

5.短期と長期に分類

次に、情報を短期的な影響にとどまるのか、長期的な影響を与えるものなのかといった視点で分類していきます。この分類は、機会に分類した情報に対しても脅威と判断した情報に対しても同様に行ってください。

このように、時間軸に沿って分類していくことで、戦略を立てる際の優先順位や対処すべき順番が明確になります。

6.戦略に落とし込む

以上のように情報を分類した後は、それらの情報を戦略に落としこみます。

具体的には、脅威を避けつつ、機会を最大限活用し、事業が中長期的に成長できるような戦略を練っていきます。

PEST分析を行うだけでは成果は出ないので、PEST分析による分析結果を、どのように使ったら成果につながるかといった視点で考えることが重要です。

注意点

注意点としては、何度かお伝えしたように、PEST分析だけでは成果が出ないということが挙げられます。PEST分析の分析結果は、あくまで戦略を考えるための材料・手段にすぎません。

手段が目的となってしまわないように注意してください。

まとめ

PEST分析とは、市場や事業を取り巻く外部要因について、Politics、Economy、Society、Technologyの4要素に分類して分析を行うというフレームワークです。

この分析を行うことで、成長性などを加味した中長期的な戦略を立案することができます。

具体的な手順としては、目的を設定して情報を集めた後、情報を「事実」と「解釈」、「機会」と「脅威」、「短期」と「長期」に分類して戦略を立てるための材料として活用します。

PEST分析を活用して、効果的な事業戦略を立案しましょう。

よくある質問



Q1. PEST分析はどのタイミングで行うのが効果的ですか。

A1. 新規事業を始める際や、既存の事業について見直しをする際など、大まかな方向性やの決定が必要な際に行うのが効果的です。


Q2. PEST分析にデメリットはありますか。

A2. はい、あります。マクロな視点で分析するフレームワークなので、短期的な計画や、詳細な施策設定には向いていません。そのため、細かい部分を詰める際にはほかのフレームワークを活用することをお勧めします。


Q3. 細かい部分を詰める際のフレームワークを教えてください。

A3. ミクロ環境要因を分析するためのフレームワークとしては、5フォース分析があります。事業環境の細かい部分を分析することができます。また、外部環境と内部環境を同時に分析することができるのが3C分析、内部環境をしっかり分析するためにはSWOT分析などのフレームワークがあります。

TOPへ戻る