世界中で急速に存在感を高めているTikTok。その進化形ともいえる「TikTok Shop」は、SNSとECを融合させた新しい形のショッピング体験を提供しています。ユーザーはショート動画やライブ配信を楽しみながら、気になった商品をそのままアプリ内で購入できるという、シームレスな購買体験が特徴です。
特に、Z世代を中心とした若年層の間で人気を集めており、単なるエンタメ系SNSの枠を超えて、マーケティングやコマースの観点でも大きな注目を浴びています。
この記事では、TikTok Shopの基本機能や出店の仕組み、ユーザーの行動傾向、そしてマーケティング活用における実践的なポイントについて、最新動向を交えてわかりやすく解説していきます。
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目次
TikTokShopとは

TikTokShopは、アプリ内で商品を出品・販売できる新しいEC機能です。
動画コンテンツやライブ配信を見ながら、気になった商品をそのまま購入できるというのが特徴です。
2025年5月現在、インドネシア、アイルランド、マレーシア、メキシコ、フィリピン、シンガポール、スペイン、タイ、イギリス、アメリカ、ベトナムで提供を開始しています。
日本ではどのタイミングで始まる?
2025年6月に始まると言われていましたが、現在TikTokShop公式サイトには「今年の夏~秋ごろに予定している」との記載があります。
日本と同時期にサービスを開始すると発表されていたブラジルでは最近サービスの提供が開始したそうなので、日本もローンチもすぐかもしれません。
TikTokShopに向いている商品
TikTokShopで販売するのに向いている商品を、TikTokの特徴や現在バズっている投稿の傾向などから分析していきます。
TikTokのアルゴリズム
TikTokの最大の特徴は、他の主要SNSと比較して、新規参入アカウントでもバズりやすいということです。
これは、媒体のおすすめアルゴリズムを比較するとよく分かります。
TikTokのおすすめアルゴリズムは、視聴完了率や視聴維持率、リピート再生数などのを基にしたコンテンツの質に重点を置いておすすめしているとされています。一方InstagramやYouTubeなどのアルゴリズムは、投稿アカウント自体の質、視聴者と投稿者の関係性(フォローしてるか、過去にいいねしたかなど)も加味しておすすめするとされています。
極端に言うと、ある投稿にいいねした場合、TikTokのアルゴリズムでは似たようなコンテンツがおすすめされるようになり、InstagramやYoutubeでは同じクリエイターのコンテンツがおすすめされるようになる、といったイメージです(実際はこの限りではありません)。
そのため、新規参入のハードルはTikTokの方が圧倒的に低く、コンテンツが良ければフォロワーが少なくても多くのインプレッションを得ることができます。
商品自体に特徴があってコンテンツ力のあるもの、新商品やリニューアルなどで認知度を上げることが成果につながるようなものがTikTok Shopで成功しやすいと言えます。
TikTokユーザーの傾向
TikTokは若者を中心に、寝る前やリラックスタイム、暇なときの娯楽目的で使われています。TikTokを使って能動的に何かを調べたりすることはあまりなく、おすすめで流れてきたコンテンツをそのまま受動的に見ていることが多いようです。
つまり、TikTokユーザーは「これについて知りたい」「これを見たい」といった明確な目的がありません。そのため、興味がないコンテンツは次々にスキップされます。
以上のユーザー傾向を踏まえると、最初の数秒で興味を惹き付けられるインパクトのある商品や、どう使うのか分からない・使っているところを見てみたいと思わせられるような意外性のある商品がTikTok Shopに向いていると言えそうです。
バズるTikTok投稿
TikTokで“バズる”投稿にはいくつかの共通点があります。
商品のプロモーションコンテンツを作成するという観点から抑えられそうな共通点としては、冒頭数秒で視覚的なインパクトがあること、真似したくなったり使ってみたくなったりするようなユーザーの体験を誘う内容であること、トレンドを生みやすいもしくはトレンドに乗りやすいことなどが挙げられます。
視覚的にインパクトのある商品はやはりバズりやすいため、鮮やかな色、ユニークなデザイン、意外な機能など動画映えする商品はTikTokShopのマーケティングにおいて有利だと言えます。
ユーザーの体験を誘うコンテンツの作成については、意外性のある商品や使用シーンを見たくなる商品が向いています。例えば、ビフォーアフターを載せられるスキンケア・コスメ商品、料理の工程を見せられる調理器具、食品などが当てはまります。
以上より、TikTok Shopでのマーケティングでは、視覚的魅力と体験価値を兼ね備えたコンテンツ性の高い商品が向いていると言えます。
TikTokShopのメリット

以下に、TikTokShopは従来のECと何が違うのか、TikTokShopを活用することでどんなメリットがあるのか深堀していきます。
ユーザーの離脱率が低い
TikTok Shopの最大の強みは、商品の認知から購入までを一つのアプリ内で完結できるシームレスな点です。
ユーザーは動画視聴やライブ配信といったエンタメ体験の延長線上で、購買へと自然に移行可能です。
多くのユーザーが求めているのは、「面倒な操作なしで、興味を持った瞬間にすぐ購入できる体験」。TikTok Shopはこのニーズに応える設計となっており、従来のECにおける離脱ポイント(LP遷移・カート投入・決済ステップなど)を最小限に抑えてあります。そのため、TikTok Shopは高いCVRの実現が可能となっています。 さらに、ライブ配信ではリアルタイムでの質問対応や数量限定オファーの提示が可能であり、「今すぐ買わなきゃ」というユーザー心理をくすぐる設計になっています。
潜在層に届けやすい
TikTokのFor You Page(FYP、おすすめ機能)は、ほかの主要SNSとは異なり、フォロワー数に関係なく幅広いリーチを可能にします。
そのため、ブランド認知のない潜在層に対しても、コンテンツの魅力次第で自然にリーチが可能です。
アルゴリズムは視聴完了率・エンゲージメント・滞在時間などを基にしており、良質なコンテンツは自然と拡散されます。つまり、「商品に魅力がある」「伝え方が工夫されている」といった要素を持つ動画は、大きな集客効果を発揮します。
TikTok Shopでは商品紹介をエンタメコンテンツとして発信することができるため、売り込み感の少ない自然な購入誘導が可能です。ネイティブ広告が大きな大きな成果を出すことができるというのはご存じの通りだと思いますが、そういった広告と同じように、広告疲れしたユーザーにも好意的に受け入れられるマーケティングができるというのが特徴です。
効率的な運営管理が可能
TikTok Shopは、商品登録から集客・販売・分析・改善までを1つのツールで実行できる総合型のプラットフォームです。特にコンテンツ起点の購買体験に最適化されており、マーケティングとEC運営を分断させずに戦略的に一元化できる点が、他プラットフォームとは違った大きな特徴です。
特に、マーケティング担当者やEC責任者にとっては、運用負荷の軽減、トレンド対応力の向上、リアルタイムな意思決定支援といった観点から、非常に魅力的なソリューションとなり得ます。
このように、TikTokShopを活用したマーケティングは、ユーザーにとってもマーケターにとってもメリットがあります。
TikTokShopの始め方
ここからは、TikTokShopを始めるための手順を具体的に解説していきます。
下記の情報は2025年6月時点の英語版サイトの情報を参考にしているため、日本版サービスの内容とは異なる場合があります。
ビジネスアカウントの開設
まずは、アカウントを開設します。
TikTokShopを利用するには、Seller Centerに入るためのアカウントが必要になります。
下記のURLからTikTokShop出店用のセラーアカウントを作成することができます。
https://seller-jp.tiktok.com/account/register
既にTikTokアカウントがある場合、そちらからログインすることも可能です。
TikTok Shopの設定
アカウントを作成し、Seller Centerへ入ったら、TikTok Shop設定のために必要な情報を入力していきます。 情報の入力手順は以下の通りです。
- 国を選択して「入力」をクリックします。
- どのようなビジネスタイプのショップを設定するか選択します。法人でショップを作成する場合は、法人名や識別番号などの情報が必要となる場合があります。
- 情報認証のステップを完了します。
- ショップの倉庫や集荷先を設定していきます。具体的には、事業所の郵便番号と住所、連絡先担当者の名前、電話番号が必要となるそうです。
- 続いて、商品の返送先を入力します。「返送先として設定」をチェックすると、先ほどのステップで入力した情報を返送先として使用することができます。別の場所を返送先にしたい場合、返送先住所・問い合わせ担当者・郵便番号・電話番号を新たに追加して設定することもできます。
- 利用規約にチェックを入れて同意します。
- 「ビジネスを開始」をクリックします。
以上で完了となります。これで、アカウントからTikTok Shopの設定ができるようになりました。
書類の提出
これで終わりではなく、実際にTikTok Shopで商品を販売するには書類を提出し認証を受ける必要があります。
書類の提出手順は以下の通りです。
- TikTok Seller Centerに移動します。
- Seller Centerの画面から「書類を認証」をクリックします。
- 「書類をアップロード」をクリックします。
- 販売者情報で、ビジネスタイプとして「法人」または「個人事業主」の該当する方を選択します。
- ショップ名を入力します。
- 書類をアップロードしていきます。個人事業主の場合は、パスポートをはじめとした政府発行の身分証明書、または運転免許証の裏表の写真をアップロードします。法人の場合は、法定代表者、取締役、またはそれに準ずる責任者の政府発行の身分証明書と、販売資格を証明するビジネスライセンス、営業許可証、登録証明書、または同様の公式文書が必要となります。
- これらの資料をアップロードしたら「送信」をクリックします。
承認を受ける
書類の提出が完了すると、アカウントは「承認待ち」の状態になります。
この審査は大体1~2日、長くても5日ほどで完了するそうです。
審査に落ちてしまった場合、資料の再提出に関するアドバイスが記載されたメールが送られてくるので、メールに記載されたガイドに従って書類を再アップロードし、もう一度審査を受けることができます。
銀行口座の紐づけ
承認を受けたら、最後に売上金の受け取りや返金対応に使用するための銀行口座をアカウントに紐づけます。
手順は以下の通りです。
- Seller Centerのページから「銀行口座の連携」をクリックします。
- 続いて「アカウントの連携」をクリックします。
- 口座名義、銀行名、口座番号、メールアドレス、住所などを入力します。個人事業主の場合は、登録した名前と口座名義が同じであること、法人の場合は、会社名と口座名義が同じである必要があります。
- これらの必須情報の入力が完了したら、「送信」をクリックします。
上記すべてが完了したらショップに商品が追加できるようになります。
TikTokShopでできること

TikTok Shopの開設が完了したら、実際に商品の販売、ショップの運営を行っていくことになります。
以下では、出品できる商品とできない商品、商品が購入された後の決済方法や配送についてなど具体的な部分について紹介していきます。
以下は2025年6月時点での公式サイトの内容を参考にしているため、最新版の内容とは異なる場合があります。
出店可能な商品と禁止商品
TikTok Shopでは、幅広い商品ジャンルを出店可能です。
特にファッション、ビューティー、ライフスタイルグッズ、グローサリー(食料品)が売れ筋で、Z世代向けの「映える」商品が多く売られています。
一方、TikTokShopでは販売できない商品があることに注意が必要です。
TikTokShopで販売に気を付けるべき商品は「禁止商品」「対象外商品」「制限付き商品」の3段階に分かれています。
禁止商品や対象外商品、制限付き商品に該当するものの一覧はこちらの記事にまとめてあるので、気になった方は是非ご覧ください。
「禁止商品」とは、そもそも日本での販売が禁止されている商品のことです。
対して「対象外商品」とは、日本での販売は可能なものの、TikTokShopでは販売できない商品です。医療機器やアルコールなどの販売資格を持っている場合でも出品はサポートされていません。対象外商品には、TikTokポリシーによって永久に許可されていない商品と今後販売が許可される可能性のある商品があります。
最後に、「制限付き商品」とは、TikTok側に書類を提出し事前承認を受けた出品者のみが販売可能な商品です。食品や化粧品の一部が当てはまります。
発送について
TikTokShopで実際に商品が注文され、発送する場合の手順は以下の通りです。
- ユーザーが商品を注文:ユーザーが商品を注文すると、TikTok Seller Centerから出品者宛てに通知が届きます。この通知がされてから2営業日後の23:59までに発送の準備を行い、配送状況を「発送準備完了」にする必要があります。
- 注文を受け、梱包やラベリングなどの発送準備を行う:商品の注文が入ると、Seller Centerから配送ラベルの印刷が可能になります。商品の梱包がすんだら、こちらの配送ラベルを印刷して貼り付けます。このとき、梱包した箱の中にパンフレットやマーケティング資料を入れることは禁止されています。また、注文が入ってから10営業日目の23:59までに「発送準備完了」になっていない場合は注文が自動的にキャンセルされます。配送状況のステータスは忘れず更新するようにしましょう。
- 発送:梱包まで済んだら、TikTokShopと提携している業者に集荷を依頼するか、提携業者を使わず自社で配送業者に依頼するかどちらかの方法で商品を出荷します。この時、配送商品の追跡機能を使用することが義務付けられています。注文日から3営業日目の23:59までに配送状況のステータスを「発送済み」にする必要があります。
- 商品の到着と売上金の反映:商品がユーザーのもとに届き、受け取りが確認されると、売上が出品者のアカウントに反映されます。
広告
TikTokShopでは、商品宣伝のための広告を出稿することができます。
広告の出稿を行うには、Seller Centerに入る必要があります。また、この時アカウント情報が「ショップオーナー」「メイン管理者」「広告マネージャー」のいずれかである必要があります。
商品を宣伝する広告としては、Spark Adsやビデオショッピング広告、商品ショッピング広告、LIVEショッピング広告などが使用できます。
ビデオショッピング広告は、既存の動画広告と同じように入稿し、キャンペーンの目的を「ショップ売上」に設定、宣伝したい商品を自身のショップから最大20商品まで選んで紐づけることができます。
商品ショッピング広告は、広告の入稿の際に目的を「ショップ売上」に、広告の種類を「商品ショッピング広告」にすることで使用できます。TikTok側が自動で商品画像や詳細情報を取得し、広告を作成します。
LIVEショッピング広告はリアルタイムでユーザーと繋がりながら商品を宣伝することができます。
これらの広告を使って、TikTokShopの商品売上を宣伝することができます。
TikTokShop成功事例
TikTokShopは、日本においてはまだサービス開始がされていませんが、既にサービスを開始している国では多くの成功を収めています。
以下で、TikTokShopの活用によって大きな成功を収めた企業の一例を紹介します。
Canvas Beauty

アメリカのスキンケア・コスメブランドのCanvas Beautyは、ブラックフライデーにTikTokライブ配信を行い、1日で300万ドルの売り上げを達成しました。これは、TikTokShopのLIVEショッピング広告における売り上げの最高記録であるとされています。
Canvas Beautyは過去にもたった1回のライブ配信で100万ドル(約1.5億円)もの売上を達成した実績を持つ、TikTok Shopマーケティングの成功企業です。
しかし、最初から順風満帆に成功していたわけではありません。
同社は2018年に創業し、当初は順調に売上を伸ばしていました。しかし、事業の拡大とともに経営は難しくなり、2022年には事業継続が危ぶまれるほどの危機に直面していました。
そんな中、2023年にアメリカでTikTok Shopのサービス提供が始まったことが、同社にとって大きな転機となります。Canvas Beautyは、TikTokを活用して新商品のプロモーションを開始。すると、その商品は配信直後から大きな話題を呼びました。
以降もライブ配信を継続的に実施し、ユーザーとのコミュニケーションを重ねていった結果、同社の事業規模は創業時の10倍以上にまで成長しました。
SNSを活用してファンを作ること、ファンとの密接なやり取りを大事にすることが成功の秘訣だと語られています。
まとめ
TikTokShopとは、人気のSNSであるTikTokのプラットフォーム上でEC販売を行うことのできる新たなサービスです。
先んじて導入された国々では大きな成功を集めており、日本でも2025年内での導入が期待されています。